私の目にはボロボロにしか見えないその寺の中は、非常にきれいで、広かった。

まさに大仏が置かれていそうな、寺そのものといった雰囲気だったが、特にそのようなものは置いていなかった。

カナ爺が言うには、ここは大広間で、入ってきた側を除く3方向には6~8畳ほどの部屋があるらしい。

建物の壁に沿って廊下があり、そこから部屋に入るのだそうだ。

見物したい、と言うと、カナ爺は本当に嫌そうな顔をした。


「金文(カナフミ)、帰っておったのか」


右手にある扉から声をかけられた。