「いや、恐らく母親は鈴香じゃろう。

カラスが騒いでいたのもその子のせいなんじゃろうし」


「えー、なんでカラスが騒ぐの?

なんで鈴香さんが親ってわかるの」


カナ爺は私の質問責めにいい加減うんざりしているようだったが、結局は教えてくれる。


「カラスが森の罪人を裁いているのは知っておろう。

異種属交配は罪じゃ。鬼の子が生まれるからの。

鬼の子は乱暴で、他の生き物を労ることができん。

その子もいずれ森の厄介物になってカラス達に裁かれることになる。

子の罪は親の罪じゃ。だから親も子も裁かれる。

鈴香はその子だけでも守ろうと、ここに連れてきたんじゃろ」


カナ爺の説明で、祖母の言っていた事を思い出した。

この家と私達は守られている。

私や祖母にモノノケ達が見えている限り、モノノケ達はこの家から何も持ち出すことが出来ず、私達から何も奪うことができない、と。

これはうちのご先祖がずっと昔にモノノケ達と交した約束らしい。

そして、モノノケ達は約束を破れないし、破ることを許さない、と。