「ピカピカ!

きれいだね」


秀まで。

何を言っているんだ。

どう見ても汚くて、クモの巣張ってるし、瓦なんか半分くらい落ちてるし、壁は穴開いてるし。

……そうか。


「目くらましだね」


狸の能力だ。

これだけ見事なのだ。

昔話で、旅人が騙されるのがわかる。


「秀は騙されないんだね」


「狐も目くらましが使えるからじゃろ」


私はちらりと横目でカナ爺を見た。


「秀の父親が狸だからかもよ?」


「それは違うと言っておろうが。

ほれ、中に入るぞ。

わし以外の狸族は全員この寺の中で暮らしておるからの」


カナ爺は相変わらず自分の種族を信じているようだった。