時が経つのは早いもので、秀を預かったのは秋だったのにもう冬が訪れている。

秀は歩くようになっているし、言葉もずいぶん覚えたみたいだ。

あの日は私のことを「ママ」と呼んだが、今は「お姉ちゃん」と呼んでいる。


「ママは鈴香さんだよ。

私は鈴香さんの友達なの」


と繰り返し教えた成果だ。

「鬼の子は乱暴だ」という言葉のとおり、秀は気に入らないことがあるとすぐに物に当たる子だった。

そのおかげで家中のふすまや障子にはいくつも穴が開いているし、壁はへこんでいる。

壊れやすい陶器やガラスの食器は仕舞われ、急遽プラスチックのものを買ってくることになった。

だが、彼が生きているものに当たることはなかった。

もし投げたものがそれて誰かに当たったとき、彼は本当にあわてた顔をして、そのぶつかった部分を小さな手で優しく撫でるのだった。

「とんでけ、とんでけ」と言いながら。

本当に可愛い。