その日、私は朝から居間で勉強をしていた。

中学校には行っていないが、勉強が嫌いなわけではない。

それに、このままでいいと思っているわけでもないし。

秀は私のそばで、あっちに行ったりこっちに行ったりしている。


「秀ー、机の下は頭を打つから危ないよ」


「あー……うー……だぁ!」


足元で何かを見つけたらしい秀が、ずるずるとこちらに向かってくる。

頭が見えて、ああ、今顔を上げたら確実に角で頭を打つなぁ、危ないなぁ、とぼんやり思っていた私は、とっさの自分の行動に我ながら驚いた。

秀がまさに勢いよく顔を上げ、頭を打つ一瞬前、頭と机の間に自分の手のひらを差し込んだのだ。