「えっと……」

こういう時はとりあえず物を知っている人を呼ぶべきだろう。

いや、ヒト、ではないが。

私はふすまを開け、ガラス戸を開け、サンダルを履いて裏庭に出た。

裏庭と言っても、ほぼ森だ。

息を吸い込み、大声で呼ぶ。

「カナ爺ー!!来てー!!」


静かな森がざわめき、目の前の薮からカナ爺が現れた。


「由香、朝から騒がしいぞ。

カラス共も騒いでおるし」


カナ爺というのは狸の爺さんで、長老。

この森とうちの祖母の事ならなんでも知っている。

見た目は、ずいぶん大きな狸。

2足歩行するし、背の高さが私の肩くらいまである。

でも、鈴香さんのようにヒトの姿はしていない。

この辺がモノノケでも狸族と狐族で違うところなのかな、と私は勝手に思っている。