モノノケモノ

「由香ちゃん!」


「うわぁぁぁ!」


驚いて飛び退り、反対側の檻に背中をぶつける。


「いてっ」


そのままへたり込んだ私を月浦さんが助け起こしてくれた。


「ありがとうございます……ってあれ?」


顔を上げた私の目の前にいた罪人は、見たことがある顔をしている。

いつもみたいに髪を結っていないし、着物も乱れているけれど、つい4時間ほど前に別れた鈴香さんだ。

私は鈴香さんに駆け寄った。

檻越しなのがもどかしい。


「鈴香さん!」


「由香ちゃん……あの子は?

あの子はどうなったの?」


「ここにいますよ。ほら」


腕の中の秀を見せると、鈴香さんは心底ほっとした顔をした。

手を伸ばして秀の頬をなでる。

やっぱりお母さんなのだ。