モノノケモノ

その階段の下は、今まで嗅いだことがない程に臭かった。

ケモノのにおいと、汚物のにおいと、湿気のにおいと、血のにおい。

後はなんだかわからないにおいが混ざり合って、表現しがたい状態になっている。

私の乏しい表現で言うと、臭い。


「うっ……」


私が思わず顔をしかめて月浦さんを見ると、月浦さんも顔をしかめていた。


「相変わらずここはひどいにおいです」


「いくら牢屋だからって、衛生状態には気を使わないと、病気がはやったりしますよ」


「そうですが……。

これほど地下深くとなると、換気もままならないんですよ」


廊下をひたひたと歩きながら、私と月浦さんは小さな声で話をする。

廊下の両側には等間隔で鉄製の檻が並んでおり、その奥から何者の物かもわからない視線が私たちにまとわりついてくる。

突然檻が鳴り、右側から手が伸びてきたのは、階段の下から数えて7つ目ぐらいの檻の前を通った時だった。