「ここから牢屋です。
なるべくお静かになさってくださいね」


と月浦さんが言った途端に秀が「うぇーん!」と泣き出した。

あやしてもあやしても泣き止まない。


「すみません……何とかしますんで……」


秀を揺らしながら話しかける。


「ねぇ泣き止んでってー。

ほら、もしかしたらお母さんに会えるかもしれないよ?

大丈夫大丈夫。

何かあっても守ってあげるよ。

私は秀の保護者なんだからね」


少しだけ泣き声が小さくなった。

まだぐずぐず言っているが、うかがうような目を向けてくる。


「大丈夫だよ」


本当は、秀はすごく賢いのかもしれない。

私の言っていることも全部わかっているのかも。


「ま、そんなことないか」


困ったように笑っている月浦さんを見る。


「たぶん大丈夫なんで行きましょう」


そうだ。私がビクビクしてはいけない。

秀は、きっと私の不安な気持ちを感じ取ってしまったのだ。

私は、鬼の子の現実に向き合わないといけないのに、その前からビビってるなんて私らしくない。


「よしっ」


月浦さんにはばれないように、小さな声で気合を入れた。