モノノケモノ

「由香ちゃんはヒトの子よね?」

「あー……そう思いますが……」

「紫乃さんに見えるものが見えなかったことは?」

「今のところないですよ。

鈴香さん達モノノケも見えてますし」

「じゃあ、いいわ」

彼女はひとり頷くと、手に持っていた包みをそっと、しかし有無を言わさぬ勢いで私に押し付けた。

柔らかく、温かい物だった。

「絶対誰にも渡さないでね。

由香ちゃんに預けたから。

紫乃さんにも渡しちゃ駄目よ」


鈴香さんは、入ってきた時と同じように慌ただしく出ていった。

しばらくの静寂の後、男の人と彼女の声。

何を言っているのかはわからなかったが、その声もやがて収まった。

「なんだったんだろう……」


腕の中の包みが「ふぇっ……」と泣き声をあげたのはその時だった。