モノノケモノ

「で?

俺もそんなに暇じゃないんでな。

さっさと話さねぇならその腕の中の赤ん坊とっ捕まえて牢屋に入れて終わりにすんぞ」


その言葉を聞いて思わず腕に力が入る。

痛かったのか、秀がもぞもぞと動いた。


「そんなことできるはずないです!

約束がありますもん!」


族長さんはニヤリと笑い、立ち上がってこちらにやってきた。


「それが、できるんだよな」


そういうと秀の脇に手を差し込み、ひょいっと抱き上げた。

なにも、起こらない。


「な、なんで……?」


秀を私の腕に戻しながら、族長さんは呆れたような顔をする。


「お前な、俺は一応この森の番人のトップだぞ?

お前らの約束のせいでモノノケが被害をこうむらないようにすんのも俺の仕事なんだから、俺は約束が効かないの。

その代わり、俺らを守ってる約束も効果ないけどな」