そして、月浦さんは少し考えた後、


「それでは、うちの上司を説得してみますか？」


と言った。


「説得って？

鈴香さんを解放するようにって？」


「それもありますが、鬼の子が今捕らえられているのは前例のせいです。

ですから、あなたが前例をくつがえせばいいのです」


どういう事だろう。

きょとんとしている私を、月浦さんはじれったそうに見る。


「ですから、あなたが、その鬼の子を、愛情を持って育てて、その秀君を、あなたの言う『気は優しくて力持ち』にすればいいのです。

そうすれば、我々の扱いが悪かった為に鬼の子が悪者になっているとわかるでしょう」


なるほど、と思う。

でも、他人の子どもを私が勝手に育てちゃっていいんだろうか？

いいとしても、私の育て方一つでこれからの鬼の子達の運命が決まるなんて、荷が重すぎやしないか。