「でも、それってそもそも鬼の子が危険な存在だっていうのが前提にあるんですよね?」


「前提、というかまあ前例がありますからね」


月浦さんは、目線を手に持っている湯飲みに落として言った。

私は、その前提が間違っているのではないか、と思うのだ。

鬼の子は他のモノノケよりも強い。

確かに、乱暴で他の生き物のことをいじめてばかりなヤツもいただろう。

でも、それは育て方次第、というか、他の生き物を大切にしなければいけない、ということを覚えさえすれば、気は優しくて力持ちな、誰からも愛される生き物になれると思うのだ。

私はヒトで、モノノケのことを知らないから甘いのかもしれない。

それでも、その可能性を考えたいのだ。

この、私の指に反応してあーあー言ってる(見た目は気持ち悪いが)可愛い生き物が、生まれながらに乱暴だとは思いたくない。

それに、鬼の子は生まれたとたんに牢屋に入れられて、他の世界を知らないままに過ごす。

その状態で、「俺超強いじゃん!」ということに気が付いたら、大暴れして外に出ようとするのは当たり前だと思う。


この思いを、考え考え月浦さんに説明している間、みんなは静かに私の話を聞いてくれた。