「いつまでもそんなとこに座ってないでよね。

何しにきたの?」


「あ、鬼の子を……捕まえに……」


水穂さんの強気な態度に押される。


「そう。さっきのコだね?

僕が捕まえてカラスのところに送り届けてあげる。

それでいいでしょ?

じゃ、帰ってくれるかな?」


心の底から面倒そうな口調で言われ、思わず「ハイ」と言ってしまいそうになる。

ダメだ。

鬼に会ったら、聞きたいことがあったんだから。

水穂さんは私の肩を掴み、体を回転させ、そのまま森の出口の方へ押そうとする。

その力に抗い、振り向いて話かける。


「一つ、聞きたいことがあるんです」


「なぁに?ヒトの子」


水穂さんは相変わらずぐいぐいと私の肩を押しているが、話を聞いてくれる気はあるらしい。


「この森には鬼は何人ぐらいいるんですか?」


「僕だけだよ。

一つの森に鬼は一人。

何?そんなことも知らないの?」


フッと鼻で笑われた。


「じゃあ、」


私はゆっくりと息を吸い込んだ。



「あなたが秀の、鬼の子の父親ですか?」