私は秀に声をかけた。


「秀、赤ちゃんの頃カラスのところで会った族長さんって覚えてる?

背が高くて横幅もある男の人」


秀はちょっと怒った顔をする。


「覚えてるよ。

おねぇちゃんに冷たかった人でしょ」


すごい。

そんな気はしてたけど、やっぱり秀はあの頃からちゃんと周りのことわかってたんだ。


「あの人、今どこにいるかな。

探して欲しいんだ」


秀は口を尖らせて不満げだったが、私がもう一度頼むとしぶしぶといった感じで周りを見渡す。

少しして、

「わかったよー」

と言い、歩き出した。


付いていこうとした私の肩が、誰かに掴まれた。

振り返ると明星がいた。


「俺も連れて行け」


「明星、怪我は?」


「もう治った」


そう言って明星はわき腹を軽く叩いた。