ということは知らない人だ。

たっぷり10秒は考えてから、私は尋ねることにした。


「すいません、どちらさまですか」


その人は、驚いた顔をして、次にさっきよりもずっと心配そうな顔をして、そしてはっと何かに気付いた顔をした。

自分の手をじっと見つめる。

なんか、私この人の顔見たことあるかもしれない。

顔、というか、表情、というか。


「あのー……、もしかして、会ったことあります?」


その人は、怒ったような拗ねたような顔をして怒鳴った。


「あるわい!

週に3日は会っとるわ!

……まったく、わからんもんかのぅ」


そして溜息をつく。

あ、今のでわかった。

秀を見ると、すごく楽しそうな顔をしていた。