「ん……」


恐る恐る目を開ける。

よかった、私の部屋だ。

あれは夢だったのか。

がばっと体を起こすと、額から濡れタオルが落ちた。

両側から同時に「大丈夫か」という声がかかる。

右側には秀、左側には……。

……誰だ?

書生さんみたいな服の男の人がいる。

薄い茶色の羽織袴。

座っているから正確なところはわからないが、私より頭半分くらい背が高そうだ。

ちょっと長めの黒髪に、優しそうに垂れた眉。

真っ黒な目は心配そうに私を見つめている。

私の知り合いにこんな人いただろうか。

最近知り合いが一気に増えたとはいえ、さすがに顔も覚えていないということはない。