モノノケモノ

「帰りませんよね?

付いてきてくれますよね?」


首を横に振ろうとしているのに、私はゆっくりと頷いていた。

なぜかはわからないが、日和子さんの言うことに逆らえない。

逆らわないことが正しいような気がしてくる。


「よかった。

今年はいいお祭りになりそうです」


日和子さんはそう言い、私の手を引いて神社の本殿に近づいていった。

本殿の入り口の両脇には、大きな生き物が立っていた。

猫の耳と猫の尻尾がついているが、自分が絵本などで知っている鬼に近い。

怖い。

全身毛皮に覆われていて、柄は白地に黒のぶちだ。

これが猫族の本来の姿なんだ。