「寒いし、そろそろ帰ろうか」
そう言ってベンチから立ち上がった、先輩の口から白い息が出る。
次に先輩の目が、東の空にあるなにかを捉え大きく開きそのままじっと見つめた。私も先輩の目線の先を追う。すると、空に浮かぶなにかを見つけた。
他の星とはどこかちがう赤く煌々とした強い輝きを放っているので、飛行機だろうかと思いながら、空にあるなにかを見つめていたら、先輩が「あれは星だよ。名前はベテルギウスって言うんだ」と囁くように教えてくれた。
その名前だけは聞いたことあるが、実物は初めて見た。夜空の中でひときわ大きく赤く光る、あの星がベテルギウスなんだ。
「先輩って星とか詳しいんですか」と訊ねると、先輩は首を振ってから「ぜんぜん詳しくはないよ。でも、ベテルギウスって曲を母さんが好きだったから、いろいろ調べて知ってるんだ」と答えてくれた。
次に先輩は、「ベテルギウスってなんの星座の一部かわかる?」と問題を出してきたので、私は夜空を見つめ、周りの目立つ星を指でなぞり結びながら考える。
すぐに気づいて、「あっ」っと声が出た。リボンのような特徴的な形だし、有名な星座だったのですぐにわかったのだ。
「オリオン座!」
「正解」と、先輩がにこにこ微笑む。
そして、先輩はあたたかくて優しい眼差しで私を包んでこう言った。
「ベテルギウスのことを調べてたら、星についていろんなことがわかったんだ。星ってさ、同じ星はひとつもなくて全部ちがう大きさや輝き方をしてて、それって僕たち人間ひとりひとりとどこか似てるって思った。その星と星を結ぶのが星座。星座は見えない線で結ばれていて、それは僕たちでいうところの人間関係に似ている。恋人関係、友達関係、家族関係。どれも大切なその関係は、絶対に大丈夫と思っていても、ほんのちょっとの綻びで絶望的に切れてしまうことがある。でも、また途切れてしまった、その線を結び直すことができるのなら、それは人が人を信じる力なんだって。結に僕は教えてもらったよ」
「そんな、たいしたことしてないです」と、私は首を横に振った。
「結はそう言うけどね。信じてるって結のまっすぐな言葉に、僕がどれだけ元気をもらったか、勇気をもらったか。この世界で誰も僕を信じてくれなくても、結が信じて側にいてくれるだけで、僕は心を強く持っていられる。だから、父さんとも面と向かって話すことができたし、上っ面ばかりの種高の流星も終わらす覚悟ができた。顔も知らないSNSの人じゃなくて、僕は僕の周りの大切な人を信じようって思えた。本当にありがとう、結」
ふたりだけの静寂で暗い夜の桜舞公園。
秋の夜風がさらさらと木々を揺らす。
風は肌を刺すように冷たいが、私の心は今とてもあたたかい。
先輩が「家まで送るよ」と言って、手をすっと差し出した。
私は咄嗟に照れて遠慮してしまい「大丈夫です」と小さく呟いたが、「大切な彼女なんだ。家まで送らせて」と言った先輩は、この夜空に輝く星のようにきらきらした笑顔で私を包む。
「ありがとうございます。じゃあ、家まで」と応えて先輩の手を取ったが、自分の頬がとてつもなく熱い。
「はい。喜んで」
星が輝く秋澄んだ空の下。
私と先輩は手を繋ぎ、家までの帰り道をふたりで歩く。
そう言ってベンチから立ち上がった、先輩の口から白い息が出る。
次に先輩の目が、東の空にあるなにかを捉え大きく開きそのままじっと見つめた。私も先輩の目線の先を追う。すると、空に浮かぶなにかを見つけた。
他の星とはどこかちがう赤く煌々とした強い輝きを放っているので、飛行機だろうかと思いながら、空にあるなにかを見つめていたら、先輩が「あれは星だよ。名前はベテルギウスって言うんだ」と囁くように教えてくれた。
その名前だけは聞いたことあるが、実物は初めて見た。夜空の中でひときわ大きく赤く光る、あの星がベテルギウスなんだ。
「先輩って星とか詳しいんですか」と訊ねると、先輩は首を振ってから「ぜんぜん詳しくはないよ。でも、ベテルギウスって曲を母さんが好きだったから、いろいろ調べて知ってるんだ」と答えてくれた。
次に先輩は、「ベテルギウスってなんの星座の一部かわかる?」と問題を出してきたので、私は夜空を見つめ、周りの目立つ星を指でなぞり結びながら考える。
すぐに気づいて、「あっ」っと声が出た。リボンのような特徴的な形だし、有名な星座だったのですぐにわかったのだ。
「オリオン座!」
「正解」と、先輩がにこにこ微笑む。
そして、先輩はあたたかくて優しい眼差しで私を包んでこう言った。
「ベテルギウスのことを調べてたら、星についていろんなことがわかったんだ。星ってさ、同じ星はひとつもなくて全部ちがう大きさや輝き方をしてて、それって僕たち人間ひとりひとりとどこか似てるって思った。その星と星を結ぶのが星座。星座は見えない線で結ばれていて、それは僕たちでいうところの人間関係に似ている。恋人関係、友達関係、家族関係。どれも大切なその関係は、絶対に大丈夫と思っていても、ほんのちょっとの綻びで絶望的に切れてしまうことがある。でも、また途切れてしまった、その線を結び直すことができるのなら、それは人が人を信じる力なんだって。結に僕は教えてもらったよ」
「そんな、たいしたことしてないです」と、私は首を横に振った。
「結はそう言うけどね。信じてるって結のまっすぐな言葉に、僕がどれだけ元気をもらったか、勇気をもらったか。この世界で誰も僕を信じてくれなくても、結が信じて側にいてくれるだけで、僕は心を強く持っていられる。だから、父さんとも面と向かって話すことができたし、上っ面ばかりの種高の流星も終わらす覚悟ができた。顔も知らないSNSの人じゃなくて、僕は僕の周りの大切な人を信じようって思えた。本当にありがとう、結」
ふたりだけの静寂で暗い夜の桜舞公園。
秋の夜風がさらさらと木々を揺らす。
風は肌を刺すように冷たいが、私の心は今とてもあたたかい。
先輩が「家まで送るよ」と言って、手をすっと差し出した。
私は咄嗟に照れて遠慮してしまい「大丈夫です」と小さく呟いたが、「大切な彼女なんだ。家まで送らせて」と言った先輩は、この夜空に輝く星のようにきらきらした笑顔で私を包む。
「ありがとうございます。じゃあ、家まで」と応えて先輩の手を取ったが、自分の頬がとてつもなく熱い。
「はい。喜んで」
星が輝く秋澄んだ空の下。
私と先輩は手を繋ぎ、家までの帰り道をふたりで歩く。


