また先輩と結ばれることができたんだ。なんだか夢みたい。そんな甘い感情に浸りながら、となりに座っている先輩を見る。
「結はなんで僕のことを信じてくれたの?ずっと、好きでいてくれたの?僕が浮気してるって悪い噂だって聞いたことあるだろうし、なんか結って素直すぎて悪い人に騙されないか心配になっちゃうよ」
先輩が冗談混じりに笑いつつも心配そうな表情を浮かべ、そう言ってきたので、私は先輩を見て「大丈夫です、ちゃんと疑ってますから。だから、私が学童に現れたんですよ」と、ベーっと舌を出して言ってやった。
「なるほど、そういうことだったのか」と、先輩が納得してぽんと手を叩く。
「先輩のこと疑って良かったです。学童は大家族みたいで素敵なとこだったし、私の知らなかった先輩をたくさん見つけることができました。そのうえで、私は先輩を信じたんですよ」
「そっか。ちゃんと僕を見てくれて。そして、信じてくれてありがとう」
「でも、最初はやっぱり先輩の内面なんてわからないから不安でした。それでも、信じてみようって思えたのは…」
私が言葉に詰まると、「思えたのは…?」と先輩が無邪気な目を丸くして復唱する。
絶対に言えないけど、最初は顔がタイプでかっこ良かったから。そりゃそうだ、相手は種高の流星。私だってそういう下心くらいある。
先輩は自分の整った顔が持つ破壊力を知らない。そのうえ相手がそうしてほしいと思う自分を演じてしまう人たらしな性格。
そんなものを彼が恋愛にうまく使ったらと思うとぞっとする。ずっと純粋で一途な先輩でいてほしいから、私は先輩の顔はあえて褒めない。
そんな下心は隅っこに置いといて、以前からずっと思っていたちゃんとした理由を話した。
「先輩がいつも弾き語りする選曲ですよ」
「え、なにそれっ」と、先輩がくすくすと笑いながら首を傾げる。
「先輩の選曲って流行りの曲じゃなくて、ちょっと古いし偏ってますよね。でも、まっすぐな恋愛の曲ばかりで、私はそういうのが好きなんです。たとえば音楽だけじゃなくて恋愛小説や漫画とかもなんですけど、浮気や三角関係みたいな刺激的なやつもたまに読んじゃうけど、本当に心が落ち込んでるときは、まっすぐな恋愛の物語が心を安心させてくれるというか、欲しくなるというか。先輩はそういうのないですか?」
私は思わず自分の好みを熱弁してしまい、先輩は男子だし恋愛小説や漫画って言われてもわからないかもと気づき、自分勝手に話したことを少し後悔した。
しかし、先輩は「うーん。僕意外と恋愛ものって読むんだけど、いつもランキングとかで上位のやつばっか読んじゃうなぁ。ほら、この前野いちごで大賞とったやつとか」と楽しそうな笑顔で話をつづけてくれた。
「僕ってほら、良くも悪くも相手に合わせちゃうから主張が薄いのかも。だから結みたいに自分の気持ちに、いつでもまっすぐ生きられるのって憧れるよ」
「じゃあ、なんで先輩の選曲って偏ってるんですか?」
「うーん、僕は偏ってるつもりはないんだけど」と先輩は苦笑いを浮かべながら、「僕がいつも弾いてる曲って、母さんからギターを教えてもらったときの思い出の曲ばかりなんだ。軽音部のバンドメンバーにも、たまにはSNSで流行ってる曲やれって言われるんだけど、僕のやる気が出なくってね。結局いつもの曲ばっかりになっちゃうんだよ」
先輩はそう答えたあと、空を仰いでふふっと微笑んでこう呟いた。
「でも、その選曲のおかげで、結が僕のこと信じようって思ってくれたのなら、天国の母さんがちょっと力を貸してくれたのかも」
「結はなんで僕のことを信じてくれたの?ずっと、好きでいてくれたの?僕が浮気してるって悪い噂だって聞いたことあるだろうし、なんか結って素直すぎて悪い人に騙されないか心配になっちゃうよ」
先輩が冗談混じりに笑いつつも心配そうな表情を浮かべ、そう言ってきたので、私は先輩を見て「大丈夫です、ちゃんと疑ってますから。だから、私が学童に現れたんですよ」と、ベーっと舌を出して言ってやった。
「なるほど、そういうことだったのか」と、先輩が納得してぽんと手を叩く。
「先輩のこと疑って良かったです。学童は大家族みたいで素敵なとこだったし、私の知らなかった先輩をたくさん見つけることができました。そのうえで、私は先輩を信じたんですよ」
「そっか。ちゃんと僕を見てくれて。そして、信じてくれてありがとう」
「でも、最初はやっぱり先輩の内面なんてわからないから不安でした。それでも、信じてみようって思えたのは…」
私が言葉に詰まると、「思えたのは…?」と先輩が無邪気な目を丸くして復唱する。
絶対に言えないけど、最初は顔がタイプでかっこ良かったから。そりゃそうだ、相手は種高の流星。私だってそういう下心くらいある。
先輩は自分の整った顔が持つ破壊力を知らない。そのうえ相手がそうしてほしいと思う自分を演じてしまう人たらしな性格。
そんなものを彼が恋愛にうまく使ったらと思うとぞっとする。ずっと純粋で一途な先輩でいてほしいから、私は先輩の顔はあえて褒めない。
そんな下心は隅っこに置いといて、以前からずっと思っていたちゃんとした理由を話した。
「先輩がいつも弾き語りする選曲ですよ」
「え、なにそれっ」と、先輩がくすくすと笑いながら首を傾げる。
「先輩の選曲って流行りの曲じゃなくて、ちょっと古いし偏ってますよね。でも、まっすぐな恋愛の曲ばかりで、私はそういうのが好きなんです。たとえば音楽だけじゃなくて恋愛小説や漫画とかもなんですけど、浮気や三角関係みたいな刺激的なやつもたまに読んじゃうけど、本当に心が落ち込んでるときは、まっすぐな恋愛の物語が心を安心させてくれるというか、欲しくなるというか。先輩はそういうのないですか?」
私は思わず自分の好みを熱弁してしまい、先輩は男子だし恋愛小説や漫画って言われてもわからないかもと気づき、自分勝手に話したことを少し後悔した。
しかし、先輩は「うーん。僕意外と恋愛ものって読むんだけど、いつもランキングとかで上位のやつばっか読んじゃうなぁ。ほら、この前野いちごで大賞とったやつとか」と楽しそうな笑顔で話をつづけてくれた。
「僕ってほら、良くも悪くも相手に合わせちゃうから主張が薄いのかも。だから結みたいに自分の気持ちに、いつでもまっすぐ生きられるのって憧れるよ」
「じゃあ、なんで先輩の選曲って偏ってるんですか?」
「うーん、僕は偏ってるつもりはないんだけど」と先輩は苦笑いを浮かべながら、「僕がいつも弾いてる曲って、母さんからギターを教えてもらったときの思い出の曲ばかりなんだ。軽音部のバンドメンバーにも、たまにはSNSで流行ってる曲やれって言われるんだけど、僕のやる気が出なくってね。結局いつもの曲ばっかりになっちゃうんだよ」
先輩はそう答えたあと、空を仰いでふふっと微笑んでこう呟いた。
「でも、その選曲のおかげで、結が僕のこと信じようって思ってくれたのなら、天国の母さんがちょっと力を貸してくれたのかも」


