今日は始業式が午前中に終わってから、午後は先輩とカフェで待ち合わせをしている。
昨晩、先輩から【ちょっと話したいことがあって、明日、桜舞駅の近くのカフェでゆっくり話そう】とDMがあったからだ。
私はキャンプのときに聞きそびれた、先輩の好きな人について訊ねるチャンスだと思った。
でも、先輩のことだ。以前、華絵さんが訊いたとき、先輩はその好きな人を守るために誰なのかを教えなかった。きっと先輩は、私にも誰なのか教えてはくれないだろう。
でも、振られた分際で本当にバカな話だし、おこがましいのだけど、その好きな人というのが、もしかしたら私かもしれないと、少しだけ期待してしまっているバカな自分がいるのだ。
だって、幼馴染の華絵さんでもないし、最大のライバルだと思っていた朝陽さんでもない。なら、消去法で私しかいないはず。私の知らないところで先輩がほかの女の子と仲良くしていたらべつだけど、先輩が悪い噂通りの人じゃないことをもう知っている。
私がカフェに着くと、先輩が入り口の前で待っていてくれて、ふたりで店内に入った。
注文した飲み物が来てから、さっそく私は「ところで話したいことってなんですか?」と、まずは本題を訊ねる。
すると先輩は少し恥ずかしそうに、「来月うちの高校の学園祭があってさ、僕は軽音部でライブすることになってるんだけど、良かった結にライブ見に来てほしいなって思ってさ」と言った。
今まで自分の弾き語りをSNSに投稿し大バズりしている種高の流星が、私なんかになにをそんな恥ずかしがっているのだろうと疑問に思ったが、誘ってもらえたことが嬉しくて「絶対、行きます」と答えると、先輩が「ありがとう」と言ってにっこり笑ってくれた。
しかし、先輩が次に不可解なことを言う。
「あ、あのさ、結が僕のライブ見に来てくれるのすごく嬉しいんだけど、本当にごめんなんだけど、学園祭当日は僕の知り合いじゃないふりしてくれない?ちょっと、訳あって結とは話せないんだ。友達と一緒に来て、ついでに屋台でも楽しんでってよ」
ものすごくモヤモヤしたけど、その場ではなにも言い出せず「わかりました」と愛想よく応えた。でも、カフェを出て先輩と別れてから、もう我慢ができなかった。
なんで先輩と知り合いじゃないふりを私はしなきゃならないのだろう。その理由を考えると、すぐに答えが出た。
あぁ、そういうことか。きっと先輩は、自分が好きな人に私の存在を見られたくないんだ。そうだよね、元カノである私が先輩の周りをちょろちょろしてたら、先輩の恋が実らない。
私だって、いくらかっこよくて優しくたって、危うい異性が周りにいて不安になってしまいそうな人とは付き合いたくない。少しでも、先輩の好きな人は私かも知れないと妄想した自分がバカらしくて涙がこぼれた。本当にこうやって脈もないのに期待してしまう自分をなんとかしたい。
そして長かったけど今、ようやく決心がついた。この恋は諦めよう。もう先輩の思わせぶりに振り回されるのはいやだ。変に期待してしまうバカな自分もいやだ。もう全部がいやだ。
昨晩、先輩から【ちょっと話したいことがあって、明日、桜舞駅の近くのカフェでゆっくり話そう】とDMがあったからだ。
私はキャンプのときに聞きそびれた、先輩の好きな人について訊ねるチャンスだと思った。
でも、先輩のことだ。以前、華絵さんが訊いたとき、先輩はその好きな人を守るために誰なのかを教えなかった。きっと先輩は、私にも誰なのか教えてはくれないだろう。
でも、振られた分際で本当にバカな話だし、おこがましいのだけど、その好きな人というのが、もしかしたら私かもしれないと、少しだけ期待してしまっているバカな自分がいるのだ。
だって、幼馴染の華絵さんでもないし、最大のライバルだと思っていた朝陽さんでもない。なら、消去法で私しかいないはず。私の知らないところで先輩がほかの女の子と仲良くしていたらべつだけど、先輩が悪い噂通りの人じゃないことをもう知っている。
私がカフェに着くと、先輩が入り口の前で待っていてくれて、ふたりで店内に入った。
注文した飲み物が来てから、さっそく私は「ところで話したいことってなんですか?」と、まずは本題を訊ねる。
すると先輩は少し恥ずかしそうに、「来月うちの高校の学園祭があってさ、僕は軽音部でライブすることになってるんだけど、良かった結にライブ見に来てほしいなって思ってさ」と言った。
今まで自分の弾き語りをSNSに投稿し大バズりしている種高の流星が、私なんかになにをそんな恥ずかしがっているのだろうと疑問に思ったが、誘ってもらえたことが嬉しくて「絶対、行きます」と答えると、先輩が「ありがとう」と言ってにっこり笑ってくれた。
しかし、先輩が次に不可解なことを言う。
「あ、あのさ、結が僕のライブ見に来てくれるのすごく嬉しいんだけど、本当にごめんなんだけど、学園祭当日は僕の知り合いじゃないふりしてくれない?ちょっと、訳あって結とは話せないんだ。友達と一緒に来て、ついでに屋台でも楽しんでってよ」
ものすごくモヤモヤしたけど、その場ではなにも言い出せず「わかりました」と愛想よく応えた。でも、カフェを出て先輩と別れてから、もう我慢ができなかった。
なんで先輩と知り合いじゃないふりを私はしなきゃならないのだろう。その理由を考えると、すぐに答えが出た。
あぁ、そういうことか。きっと先輩は、自分が好きな人に私の存在を見られたくないんだ。そうだよね、元カノである私が先輩の周りをちょろちょろしてたら、先輩の恋が実らない。
私だって、いくらかっこよくて優しくたって、危うい異性が周りにいて不安になってしまいそうな人とは付き合いたくない。少しでも、先輩の好きな人は私かも知れないと妄想した自分がバカらしくて涙がこぼれた。本当にこうやって脈もないのに期待してしまう自分をなんとかしたい。
そして長かったけど今、ようやく決心がついた。この恋は諦めよう。もう先輩の思わせぶりに振り回されるのはいやだ。変に期待してしまうバカな自分もいやだ。もう全部がいやだ。


