この夢がきみに喰われても

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「これは……驚異的な回復ですね。そもそも症例が少ないのでなんとも言えませんが、夢欠症患者では初めて目にするレベルで治療が成功してるんじゃないでしょうか」

 あれから数週間、二回目のテストが終わり、どこにいても蝉の大合唱がぐわんぐわんと耳に響いている。学校ではもうすぐ訪れる夏休みに、部活三昧だと嘆く人、今年の花火大会は誰と行こうと色めき立つ人など、様々だ。
 私は、両親と共に榊原総合病院に来ていた。先月結叶の夢をいただいてからその後の変化について、問診とMRIで検査をした。
 問診では、最近よく夢を見るようになったこと、頭痛やめまいが減っていることを話した。

「MRIでの画像でから分かる通り、この辺の脳の萎縮が止まっているんですよ。元に戻すことは難しいと言われてますが、このまま萎縮が止まれば病状は順調に回復していくと思われます」

「やった……」

 専門的なことはよく分からないが、医者の「回復していく」という言葉が、素直に嬉しくて思わず両親と目を合わせた。

「きっと、羽鳥くんの夢への想いが強かったのが要因だと思います。彼に感謝ですね」

「は、はい。結叶には本当に感謝してもしきれません」

 あの日、結叶が私に夢をくれてから、彼は変わらずに私と友達でいてくれる。期末テストでも相変わらず一位をキープしていたし、夢を失ったというのに、まったく変わらない様子の彼。無理をしているのかもしれないけれど、結叶の優しさと強さに、ただただ脱帽するばかりだ。

「これからも経過を見ながら定期的に検査していきましょう。完治するように頑張りましょうね」

「分かりました。ありがとうございます」

 医者がにっこりと笑い、私はほっと胸を撫で下ろした。
 病気が治るかもしれないのだ。
 あれだけ私を孤独にして悩ませてきた諸悪の根源がなくなるのかと思うと、胸がすっきりと晴れ渡る気分だった。