この夢がきみに喰われても

「どうしてもっと早く言ってくれなかったの?」

「……え?」

 信じられない言葉が彼女の口から飛び出してきて、今度は私が唖然とする番だった。
 今、里香は何て……?
 “どうしてもっと早く言ってくれなかったの”。
 その言葉が表す意味を、理解できないはずがなかった。

「私、恵夢が勝手に私から離れていっちゃったって思って、ずっと辛かったんだよ? 紗枝も朱莉も、本当はあんたとちゃんと話し合いたいって言ってたのに、あんたは私らを避けるようになって……。前みたいに、みんなで仲良くしたいのに、恵夢が一人で遠くへ行っちゃうから、何もできなかったのっ!」

「え、そ、それって……」

 感情的に叫ぶ里香を見て、私は混乱していた。
 だって、私の方が避けられていると思っていたから。
 明るい性格だった自分が、病気が原因で塞ぎ込むようになって。里香たちは変わってしまった私に愛想を尽かしてしまったんだと思っていた。
 でも全部、私の思い込みだったの?
 里香たちは、本当は私のことを心配して——。

「私らが理由もなく恵夢のこと嫌いになると思う!? 病気のこと、言ってくれればみんなで色々と協力できたのに! 部活だって辞めなくて済む方法、みんなで考えたよっ。恵夢のバカっ……」

 ずるずると鼻を啜る音が聞こえる。里香の顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていた。思わず私の両目から涙が溢れてくる。教室の真ん中で、クラスメイトに見られながら私たちは互いを殴り合うようにしてぶつかっていた。

「そんな……みんなが、そんなふうに思ってくれてるなんて、知らなくて。珍しい病気だからきっと信じてもらえないと思ったんだ……。だから、言えなかった」

 ずっと寂しかった。
 本当は友達に助けてと叫びたかった。家族にも、辛いことは辛いって吐き出したかった。
 今、溜まっていた寂しさの塊が親友の前でどっと溢れ出す。

「信じるよ! 恵夢がタチの悪い冗談言う人間じゃないって知ってるからっ。で、でも……私らも、恵夢に嫌われてると思って、意地悪言って傷つけてごめん。本当に、ごめんなさい」