「羽鳥くんってどこから来たの? 東京の人?」
「静岡。東京は旅行でしか来たことない」
「へえ、そうなんだ〜。じゃあ今度東京案内してあげる! 楽しい場所いっぱいあるよ」
「おい今村、しれっとデートに誘ってんじゃねえぞ。まずは男と遊ぶのが先だろ」
「はあ? デートとか一言も言ってないじゃん。みんなで行くの! ねえ、それならいいでしょ」
「俺は、べつに」
一目惚れをしたのか、羽鳥くんのことを気に入った様子の今村さんがしゃあしゃあと声を上げる。あれだけイケメンなら、今村さんだけじゃなくて他の女子たちもメロメロなんだろうな。男子だって、自分より男前な人間にすぐ平伏したがるんだから。
肝心の羽鳥くんは常にクールな返答をしている。感じ方によっては冷たいように聞こえるが、転校初日だし緊張しているのかもしれない。彼を囲んでいる人たちは、その素っ気なさこそ魅力的に感じているのか、全然気にしていない様子だった。
……って、なんで私はいつも傍観者気取りで身勝手なことを考えているんだろう。
きっとあの人たちが——羽鳥くんを含め、彼の周りを囲っている人たちが、今の自分にはどうしてようもなく眩しく映っているからだ。
私はあんなふうに、一人の人間に対して一生懸命に追いかけることはできない。
自分の未来さえままならないのに、他人のことなんて考えられるはずがない。
ズキンとこめかみが疼く。病気のことを考えると、いつだってそうだ。頭が痛い。早く、今日一日が終わってほしい。
転校生のことを考えていたのに、いつのまにか息苦しさを覚えていた。とその時、羽鳥くんを囲んでいる集団の隙間から、ちらりと彼の顔が見えた。そして、どういうわけか一瞬だけ目が合って、気まずさを覚える。彼に対して何もアクションを起こしていないのに、いや起こしていないからこそ、なんとなく申し訳ないような気がした。
「静岡。東京は旅行でしか来たことない」
「へえ、そうなんだ〜。じゃあ今度東京案内してあげる! 楽しい場所いっぱいあるよ」
「おい今村、しれっとデートに誘ってんじゃねえぞ。まずは男と遊ぶのが先だろ」
「はあ? デートとか一言も言ってないじゃん。みんなで行くの! ねえ、それならいいでしょ」
「俺は、べつに」
一目惚れをしたのか、羽鳥くんのことを気に入った様子の今村さんがしゃあしゃあと声を上げる。あれだけイケメンなら、今村さんだけじゃなくて他の女子たちもメロメロなんだろうな。男子だって、自分より男前な人間にすぐ平伏したがるんだから。
肝心の羽鳥くんは常にクールな返答をしている。感じ方によっては冷たいように聞こえるが、転校初日だし緊張しているのかもしれない。彼を囲んでいる人たちは、その素っ気なさこそ魅力的に感じているのか、全然気にしていない様子だった。
……って、なんで私はいつも傍観者気取りで身勝手なことを考えているんだろう。
きっとあの人たちが——羽鳥くんを含め、彼の周りを囲っている人たちが、今の自分にはどうしてようもなく眩しく映っているからだ。
私はあんなふうに、一人の人間に対して一生懸命に追いかけることはできない。
自分の未来さえままならないのに、他人のことなんて考えられるはずがない。
ズキンとこめかみが疼く。病気のことを考えると、いつだってそうだ。頭が痛い。早く、今日一日が終わってほしい。
転校生のことを考えていたのに、いつのまにか息苦しさを覚えていた。とその時、羽鳥くんを囲んでいる集団の隙間から、ちらりと彼の顔が見えた。そして、どういうわけか一瞬だけ目が合って、気まずさを覚える。彼に対して何もアクションを起こしていないのに、いや起こしていないからこそ、なんとなく申し訳ないような気がした。



