この夢がきみに喰われても

 目を覚ますと、自分が病院のベッドに寝かされていると瞬時に理解した。
 手探りで引っ掴んだナースコールを押すと、看護師が駆けつけてくる。

「内藤さん、目が覚めましたか。気分はどうですか?」

「痛いところは、ないです」

「それなら安心しました。道端で倒れているところを、通りがかった人が見つけて救急車を呼んでくれたの。大事に至らなくて良かった」

「そうだったんですね。ありがとうございます」

 看護師がほっと胸を撫で下ろすのを見て、私もふう、と息を吐いた。
 学校を飛び出して、その矢先で倒れてしまうなんて……。
 今まで何度か発作が起こった経験はあったけれど、意識を失ってしまった経験は初めてだった。誰も見つけてくれなかったら——と思うとゾッとする。今回はたまたま助かったけれど、もし放置されていたら、今頃死んでいたかもしれない。
 そう思うと背中に冷や汗が滑り落ちた。

 その後、私は簡単な検査を受けて、特に身体に異常はないと診断された。
 でも、脳機能が確実に衰えているとのことで、またいつ今回のように倒れ込んでしまうか分からないそうだ。医者からはいつも以上に大量の薬を渡された。発作止めと鎮痛剤。相変わらず治療薬はない。
 このままだと私、やっぱりもうすぐ……。
 今日に限って嫌な想像ばかりが頭に思い浮かぶ。里香と教室で詰り合うようなことをしてしまって、心が弱っているんだ。