この夢がきみに喰われても

「この間、ママの病院について行ったの。榊原(さかきばら)総合病院。受付でスタッフの人と話してる結叶くんを見かけたから。ちょっと話しかけても曖昧に誤魔化された。なんか慣れてる様子だったし、彼女(・・)のあんたなら知ってんのかなって」

「彼女」というところをあえて強調しながら教えてくれる。榊原総合病院というのは、この辺りで一番大きな病院であり、私が夢欠症のことでかかっているところでもあった。

「彼女じゃないんだけど……でも病気とか、聞いたことないよ」

 やんわりと恋人であることを否定しつつ、首を横に振った。里香は不服そうに顔を歪める。

「ああ、そう。彼女のくせに結叶くんのこと全然知らないんだね」

「……っ! だから、彼女なんかじゃ——」

「それならどうして二人でデートなんか行ってたの? もしかしてあんたの一方的な片想い? それならやめておいたほうがいいよ。結叶くん人気者だし、叶いっこないって」

 まるで私を嘲笑うかのような物言いに、心臓に鋭利な刃物を突き立てられたような心地にさせられた。 
 ねえ、なんで?
 なんで里香はそこまで私のことを目の敵にするの?
 私たち、友達だったじゃん。
 性格が変わったくらいで、部活を辞めたくらいで、なんでそこまでして——。
 ふと彼女の顔を見つめると、里香の瞳が、湿り気を帯びていることに気づく。
 里香、どうしてそんな顔を。
 そこまで考えた時、ある事実に思い至る。

「水原さん、もしかして結叶のこと好きなの?」

 今度は里香の目が大きく見開かれた。彼女が呼吸をするのに合わせて、瞬きを繰り返す。泣きそうな表情でくしゃりと顔を歪めた。
 ……やっぱり、そうなんだ。
 里香は結叶のことが好き。だからこそ、私が結叶と二人で遊んでいる現場に出会して、あんなに激昂していたんだ。私を裏切り者と罵ったのも、私が彼と付き合っていると信じたから。

「水原さん違うよ。さっきも言った通り、私は結叶と恋人なんかじゃ、」

「うるさいっ!」

 教室に響き渡る怒号。友達と談笑していたクラスメイトたちが一斉にこちらを振り返る。里香は構わずに鬼のような形相で私を睨みつける。顔が熱い。頬も耳も一気に熱が上昇して全身が燃えているような感覚に陥った。

「あんたに私の何が分かるのっ! 何も知らないくせに、分かったような口利かないでよ!!」

 聞いたことのない里香の叫び声が耳をつんざく。
 あなたに私の何が分かるの。
 いつか、私が結叶に対して抱いたような気持ちを、彼女は叫んでいる。分からない。分かるはずない。だって、離れていったのは里香じゃないか。里香も紗枝も朱莉も、私が病気で塞ぎ込んでから、性格が変わったって私を詰って離れてしまって。それなのにどうして私が責められなくちゃいけないの?