この夢がきみに喰われても

「ゲーセンでも行かない? ごめん、俺ばっかり楽しんでて二人で楽しむこと忘れてたから」

「そんなことないけど、いいよ、ゲーセン」

 ようやく中学生らしい目的地を思いついたらしく、私はゲームセンターの入っている建物へと彼を連れて行った。かなりの広い敷地に、クレーンゲームやプリクラがひしめき合っている。

「なんか欲しいもんある?」

「えっと、あのうさぎのぬいぐるみ……」

 急に欲しいものと言われて困ったが、ぱっと目に飛び込んできたうさぎのぬいぐるみを指差した。女の子たちの間で流行っている白色のうさぎ。里香たちと、お揃いのキーホルダーを買ったのは半年以上前のことだ。そのキーホルダーは今、私の部屋の机の中にしまってある。

「あれね。おっけー」

 軽く返事をすると、結叶はゲーム機の前に立ちはだかり百円玉を二枚投入した。一回二百円。取れるかどうかも分からないのにお金を使わせて申し訳ないなと思いつつ、ゲームに集中する結叶が格好良く映った。

「いけー!」

 たった二つのボタンを操作するだけなのに、大袈裟に掛け声を決める彼にくすっと笑いつつ、ゲームを見守る。結叶が掴んだうさぎのぬいぐるみは、出口の付近でポトンと落下した。

「あ……」
 
 もうすぐで取れそうだったのに! 落胆している私をよそに、結叶は再びお金を入れた。

「あと一回で取れるぞ」

「え?」

 驚く私にお構いなく、彼は再びアームを動かし始める。
 すると、彼の宣言通り、うさぎを掴んだアームはそのまま出口の方へと進み、見事に出口の上でうさぎを落下させた。

「わ、すごい! やったー!」

「へへ。な、言ったとおりだろ?」

 得意げに鼻を掻く結叶が、学校では見せない子供らしい笑顔を浮かべていた。
 私は結叶からうさぎを受け取り、ぎゅっと抱きしめる。ふわふわとした手触りがしてずっと触っていたくなる。

「ありがとう」

「どういたしまして。他にも欲しいもんあったら取るぞー」

 一回目で味をしめたのか、はりきっている結叶がなんだか可愛らしい。一度プレゼントをもらったのでもうお腹いっぱいではあったけれど、やる気に満ちている彼を見て、「あっちのお菓子は?」と提案してみせた。

「いいね」

 お菓子のゲーム機の方へと移動して、大量のチョコレート菓子が取れそうな機械の前で立ち止まる。そこで結叶がお金を入れようとした時だった。