「うん、そうだね。羽鳥くんの言う通り、羽鳥くんの前なら取り繕わなくて済みそう」
「おう。そうと決まればあれだ、呼び方変えね?」
「呼び方?」
「ああ。俺、内藤さんのこと恵夢って呼ぶから、内藤さんも俺のこと結叶って呼んでくれていいよ」
「え!?」
まるで恋人同士のような名前の呼び方を提案されて、思わず心臓が飛び出そうになった。
「い、いきなり名前で呼ぶのはちょっと……」
「いきなりじゃねえじゃん。これまではお互い苗字で呼び合ってただろ? 友達になるんなら、これからは名前でいこーぜ」
「これまでって、一週間も呼んでないんですが」
「細かいことは気にすんな! 禿げるぞ」
「そんなことでは禿げません!」
ゼエゼエ、と肩で息をしながら必死になって言い返している自分がいた。そんな私とは裏腹に、羽鳥くん——もとい、結叶はケタケタと笑っていた。
「も、もう! 笑わないでよ、ゆ、結叶」
「おおう、やっぱ新鮮だな。恵夢」
自分から名前呼びを提案したくせに、ちょっと照れくさそうになるのはやめてほしい。
その後も私たちは、慣れない呼び方で世間話を楽しんだ。
主にテストの話だったが、それ以外にも、先生たちの裏話やクラスの誰と誰が付き合っているかとか、誰と話しても盛り上がるような話題に花を咲かせた。
勉強の時間と合わせて三時間ほどが経ち、そろそろお暇しようかという時だ。
肝心の話をしていなかったと思い出す。
「あの、今日学校でのことなんだけど」
「ん?」
結叶はすでに使い捨てのコーヒーカップを私のものと重ねてゴミ箱に捨てに行こうとしていたが、私の方を振り返る。
「飯島さんたちが私に言いがかりをつけてきた時、守ってくれてありがとう」
結叶がすっと目を細めた。孫を見つめるおばあちゃんみたいな優しげな微笑みに、思わず胸が高鳴る。
「ああ、そのことか。大したことじゃねえよ。あん時も言ったけど、むしろ気づいてやれなくてごめん」
「おう。そうと決まればあれだ、呼び方変えね?」
「呼び方?」
「ああ。俺、内藤さんのこと恵夢って呼ぶから、内藤さんも俺のこと結叶って呼んでくれていいよ」
「え!?」
まるで恋人同士のような名前の呼び方を提案されて、思わず心臓が飛び出そうになった。
「い、いきなり名前で呼ぶのはちょっと……」
「いきなりじゃねえじゃん。これまではお互い苗字で呼び合ってただろ? 友達になるんなら、これからは名前でいこーぜ」
「これまでって、一週間も呼んでないんですが」
「細かいことは気にすんな! 禿げるぞ」
「そんなことでは禿げません!」
ゼエゼエ、と肩で息をしながら必死になって言い返している自分がいた。そんな私とは裏腹に、羽鳥くん——もとい、結叶はケタケタと笑っていた。
「も、もう! 笑わないでよ、ゆ、結叶」
「おおう、やっぱ新鮮だな。恵夢」
自分から名前呼びを提案したくせに、ちょっと照れくさそうになるのはやめてほしい。
その後も私たちは、慣れない呼び方で世間話を楽しんだ。
主にテストの話だったが、それ以外にも、先生たちの裏話やクラスの誰と誰が付き合っているかとか、誰と話しても盛り上がるような話題に花を咲かせた。
勉強の時間と合わせて三時間ほどが経ち、そろそろお暇しようかという時だ。
肝心の話をしていなかったと思い出す。
「あの、今日学校でのことなんだけど」
「ん?」
結叶はすでに使い捨てのコーヒーカップを私のものと重ねてゴミ箱に捨てに行こうとしていたが、私の方を振り返る。
「飯島さんたちが私に言いがかりをつけてきた時、守ってくれてありがとう」
結叶がすっと目を細めた。孫を見つめるおばあちゃんみたいな優しげな微笑みに、思わず胸が高鳴る。
「ああ、そのことか。大したことじゃねえよ。あん時も言ったけど、むしろ気づいてやれなくてごめん」



