この夢がきみに喰われても

「え!?」

 声をかけられたことに純粋に驚いて、おかしな声を上げる。その声に彼の方もびっくりした様子で目を丸くした。

「突然話しかけたりしてごめん」

「いや……大丈夫、です」

 どうしてか敬語になってしまうのだが、彼はそんなことはまったく気にしてない様子だった。

「あのさ、内藤さん。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

「聞きたいこと……?」
 
 羽鳥くんが私に話しかける度に、教室の空気がざわつき始める。「なんで内藤と喋ってんの?」「あの二人、知り合い?」と、私たちのことをヒソヒソと噂する声が嫌でも耳に入ってくる。外野の声をシャットダウンしたい衝動に駆られたけれど、この半年間で鋭敏になってしまった私の耳はもう、自分に向けられた棘のある言葉を、拾わずにはいられない。

「昨日、職員室の前の廊下に作文が掲示されてるのを見たんだ。テーマは『将来の夢』だった。小学校の先生になるのが夢だって書いてある作文。なんかすごく良い文章だなって思って、気づいたら読み耽ってた。あれってやっぱり内藤さんのだよな? 名前見たんだけど、うろ覚えだったから、昨日教室で内藤さんの名前を聞いて、きみのことかなって思って」

「作文……将来の夢……」

 心当たりは大いにあった。
 あれは確か、二年生になったばかりの春のことだ。
 まだ将来とか夢とか、なんとなくしか描けない年頃に、学年全体で作文コンクール用の作文を書く授業があった。進学したい高校すら決まっていないのに、将来の夢について書くのは、クラスのみんなかなり苦戦しているようだった。
 でも私は違った。
 中学校の先生になりたい。
 いつからか強く思い描いていた素直な気持ちを作文に込めた。
 先生という夢を持ったのは、自分が小学生の頃だ。