萌希side

「萌希!朝ごはんできたわよー!」

という騒音とともに目が覚める。
まだ気怠い体を起こして重い瞼をこする。

部屋着を制服に着替えて、髪を梳かし、鏡をチェックする。
今日もばっちりかわいい。

とんとんとん、とリズミカルに階段を降りてリビングに入る。

「萌希おはよ。朝ごはんさめちゃうよ。」

その声とともに私の心が跳ねる、平然を装う。

「しーくんおはよ。ありがとう。」

そして1つ、疑問が浮かぶ。

「あれ、今日は莉緒さん日勤じゃないの?」

「あー、昨日夜救急で呼び出されて急遽予定が変わったらしい。」

莉緒さんはしーくんのお母さんで、看護師で、毎日忙しく働いている。
お父さんはすごい人みたいで、今は海外に出張中だそうだ。

私はしーくんの隣に座っていただきます、と手を合わせる。

何回一緒にご飯を食べてもなれない心臓は、未だどきどきしたまんま。

「そういえば、莉緒ちゃんはいつ帰ってくるの?入学式は大丈夫?」

お母さんの声が食卓に響きまわる。

「あー、実は父も母も今回は参加できないそうで…。」

「あら、そーなの?じゃあ私が代わりに写真たくさ撮らなきゃね。」

といってお母さんはカメラを用意する。
その隣にはしーくんと私の写真が大量に挟まっているであろうアルバム。
正直、気になるけど一回も開いたことがない。