もえぎside

お母さんがドアを開けた瞬間、なんて整った容姿なんだろうと思った。

色白で細身だが健康的な雰囲気をまとう彼は、誰もが見惚れるだろうというほど整った笑顔をしていた。
縮毛矯正を疑ってしまうほどのさらさらな黒髪に、綺麗な二重、幼さからにじみ出るかわいさ。けれど、少し男の子を感じる。
そんな彼の容姿には、お母さんの後ろから覗くだけでも将来さぞかっこよくなるんだろうと断言できるほどの確証があった。

そして同時に、きっと彼もこの容姿に苦労してきたのだろうと同情した。








「こんにちは。お名前は?」

急に尋ねられてびっくりする。
変なことを考えていたな、と冷静になった。

「こんにちは!もえぎのなまえはふわりもえぎっていうの。」

私は求められているであろう返事をする。

そうすると私の予想通りで、お母さんも、女の人も あらまぁ、というように私を見て微笑んでいる。
一安心して、ほっと一息つくと目の前の男の子が一瞬顔を曇らせた。

きっと同族嫌悪だろう。
それに少しいらっとして、しなとの自己紹介を跳ねのけてしまった。

お母さんには少し怒られたが、”はーい”と元気よく手を挙げて挨拶しその場を和ませることに成功する。

そしてまた”俺は気にしてませんので。”にいらっとする。

お母さんたちは立ち話をはじめてしまった。
正直早く帰りたい気持ちが強かったし、きっと相手もそうなのだろうが、
私たちは、にこにこと、お互い見つめ合っていた。