あの夏、君と最初で最後の恋をした

学校に着いて靴を上履きに履き替え教室へとゆっくり歩く。

明日から夏休みというのもあってか、
まわりは何だかみんな嬉しそうだ。

空気がいつもと違う。

色で例えるなら明るい原色で包まれているかのよう。

……颯太がいる時は、
私の世界も明るかった。

颯太が隣にいてくれて、
笑ってくれるだけで、

私はいつも明るくて優しい色に満たされていた。

だけどあの日から、
私の世界は真っ暗だ。

……今でも覚えてる。

忘れられない。

病院の白い壁も、
薬品の匂いも、
バタバタと急ぎ足の看護師さんも、

泣いてる颯太の両親も、
パパもママも、


寝ている様に穏やかな顔をした、
颯太も。


頭にこびりついて、
離れない。


あの日から、
私の世界は色を失った。



教室に入って席についていつものように窓から外を眺める。
クラスメイトは遠巻きに私を見ているけれど、
その視線は同情の色を含んでいるのが分かる。

そんな視線にも慣れた。
ひとりで外を眺めるのも慣れた。

だけど、
だけどね、颯太。

颯太がいない、
颯太が隣にいない、
そんな毎日は、

慣れないの。