あの夏、君と最初で最後の恋をした

「気をつけてね」

玄関でローファーに履き替え、ドアを開けようとする私の後ろから聞こえてきたママの声。

振り返るとママが心配そうに眉を下げて、
だけど無理に作った笑顔を浮かべている。

「いってきます」

それだけ返してドアを開け外へとゆっくりと足を踏み出す。

ママがあんな顔をする様になったのは、
あの日からだ。


……颯太が事故で亡くなった、あの日から。

外へ出ると痛いくらいの太陽の光が降り注ぐ。
あまりの眩しさに思わず目を細めてしまう。

あの日も、太陽が眩しかった。
暑くて暑くて、
だけど、明日から夏休みだって浮かれて颯太と一緒にこの道を歩いた。

幼い頃からずっと颯太と一緒に歩いたこの道。


なのに今、
どうして私はひとりでこの道を歩いているんだろう。

どうして、

颯太は隣にいないの――。