あの夏、君と最初で最後の恋をした

颯太と一緒にすぐに美也子さんに指輪を渡して、家に戻った。 
美也子さんはずぶ濡れで汚れていた私達に驚いた顔をしていた。
こんな格好のままで行ったら気を遣わせてしまうのは分かっていたけれど、
一刻も早く指輪を渡したかった。
安心してもらいたかった。
1秒でも早く、指輪を美也子さんの元へ帰してあげたかった。

涙を流して指輪を受け取ってくれた美也子さんは、
もう笑顔を無理に作っていなかった。

「ありがとう、本当にありがとう」

私の両手を包み込むように握ってそう言ってくれた。

風邪を引くといけないから、うちでお風呂に入って、お礼もしたいし泊まっていってと言ってくれたけれど、これ以上雨や風が強くなる前に帰りますと言って美也子さんの家を後にした。

2人で家に帰り、先に私がお風呂に入り汚れを落とし身体を温める。

髪の毛を拭きながらリビングにいくと、颯太はテレビで台風のニュースを見ていた。

「お風呂、先にありがとう」

「ううん、ちゃんと温まった?」

「うん、颯太も早く温まってきて」

「そうだね、ありがとう」

そう言ってリビングを出た颯太の代わりに台風のニュースを目で追う。

台風が直撃はなさそう。
明日は晴れるみたいだし、紬ちゃんは予定通り2日後こっちに来ると思う。

どうしよう、何て言えばいいんだろう。

颯太の事を弟のように可愛がっていた紬ちゃんだし、
最初は驚くだろうけど、紬ちゃんは昔から不思議な話とか好きだったし、すぐに受け入れてくれるよね?

颯太も、紬ちゃんがいても大丈夫だよね?
颯太だって紬ちゃんには小さい頃から懐いていたし。

大丈夫、大丈夫。

このまま、颯太といられる。
大丈夫……。

そう、信じたいのに、
私の胸はざわざわと暗く嫌な感じが広がっていった。