あの夏、君と最初で最後の恋をした

颯太と過ごす3日目の夜。
まだ暑さは残るけれど、涼しく心地良い風が吹き昼間より幾分か涼しく感じる。

夜ご飯を食べ片付けを済ませ、2人で庭に出る。

「最初はやっぱりこれかなー」

一緒に買った花火の中から1本手に取り、ロウソクに近づけると、花火から瞬く間に黄金色のキラキラした火が放たれる。

黄金色から青や赤に色を次々と変えていくこの花火は私のお気に入り。

「友花、いつもその花火を最初にするよね」

「だって綺麗でしょ?
色んな変化が可愛いもん」

他愛もない話をしながら2人で次々と花火に火をつけていく。

少し派手な花火や可愛い花火、
たくさん楽しんだ後はお決まりの線香花火。

小さな光の玉はチリチリと小さな火花を上げる。
2人で並んでそんな小さな光を見つめる。

いつもならどっちが長く保つか、なんて言いながら競うのに、今日はそんな気になれなくて、
ただただ、小さな光の玉を静かに眺めていた。

「あ……」

先に落ちたのは、颯太の線香花火だった。

地面にぽとりと小さな光の玉が落ちて消えていく。

「友花の勝ちだね」

いつもなら嬉しいその言葉に、今日は喜べなくて。
私は何も言えなくて自分の線香花火をバケツに入れて颯太の身体に自分の身体を寄せる。

「友花?
どうしたの?」

「……何でもない。
ただ、颯太にくっつきたくなっただけ」

「……そっか」

虫の鳴き声しか聞こえない庭で、
2回目のキスをした。

唇から伝わる颯太の暖かさに、
泣きたくなった。


「大好きだよ、颯太」

この3日間で何度伝えただろうか。
それでも、何度でも何度でも、伝えたい。

大好きだよ、颯太。

たったひとりの大好きな人。

「颯太がいたら、私もう何もいらない」

颯太を真っ直ぐに見ながらそう伝えた。

だけど颯太は、
眉を下げ、
悲しそうに、笑った。