あの夏、君と最初で最後の恋をした

バスに乗って街中まで出ると、2年前にはなかったお店がたくさん出来ていた。
元々海が綺麗な町だからスキューバダイビングや新鮮な魚料理、それに自然や星空なんかを楽しみにくる観光客はいたけれど、
最近はそれだけじゃなく、人口減少対策のために若い子達が楽しめる街作りにも力を入れているらしい。

映画館も昔からある古い映画館から新しく綺麗な映画館に改装されていた。
ショッピングモールも出来てるし、何だか知らない所に来たみたいだ。

「何見ようか?」

映画館の中に入り上映されている映画をチェックしながらそう聞いてくる颯太。

「うーん、いつも私が見たい物につきあわせちゃってるし、今日は颯太の見たい物見ようよ」

「大丈夫だよ、友花が見たい物は僕も面白いって思う物ばかりだから」

「本当?
じゃあ、これ見たいな」

私が選んだのは、夏休み前から公開されている青春恋愛物。
クラスの女の子達が話題にしてたから私も何となく知ってたけれど、見る気にはなれなかった。

去年までならすぐに颯太を誘って公開日には見に行っていただろう、青春恋愛物。
颯太がいないと見る気にもなれなかった。

「友花はこれ選ぶと思った」

「やっぱり?」

「うん。
じゃあチケット買ってくるね」

そう言ってチケットを買いに行く颯太の背中を眺める。

颯太は歩く時もいつも私の隣を歩いてくれた。
自分だけ先にいくなんて事なかった。  
だから、私は昔から颯太の背中を眺める事はあまりなかったけれど、
たまにこんな風に颯太が何か買いにいったりする時に颯太の背中を眺めていた。

いつも何気なく眺めていた颯太の背中が今は愛しくて、なのに何故か、胸がぎゅっとして苦しい。

何でだろう、
胸が、喉が痛くて苦しい。

颯太、
颯太、


「追いてかないで……」

ぽつりとこぼれた言葉は喧騒に紛れて消えていく。

何で、何で?
今颯太は私といてくれてるのに。

胸が痛い。
喉に熱くて苦しい物が込み上げてくる。
鼻の奥が痛い。

「いかないで……」

そう呟いて颯太に駆け寄る。
ぶつかる勢いで颯太に後ろから飛びついた。


「友花?」

驚いた声で私の名前を呼ぶ颯太。

「どうしたの?」

相変わらず優しく、だけど心配も含んだ声でそう聞いてくる颯太にまた胸が痛いなる。
だけど、ぐっと痛みも苦しみも飲み込んで笑顔で顔を上げる。

「何でもないよ!
早くいこっ!」

明るくそう言って颯太の手を取り歩き出す。

颯太。
このままずっとずっと、
私の隣にいてね。

ずっと、ずっと――。





ねぇ、颯太。
私、この時分かってたんだと思う。

この時間は、
颯太が隣にいる、この時は、
もう終わりが近い事を。