あの夏、君と最初で最後の恋をした

僕は、ちゃんと笑えているかな――。


一瞬だった。
スピードを出した車が来ていると分かった時には身体中を強い衝撃が襲った。

気がついたら自分の身体を見下ろしていた。
足元がふわふわとして不思議な感じがした。

僕を心臓マッサージしていた手が止まり、付けられていたたくさんの管が外され、
僕の身体を看護師さん達が拭いていく。

出血も綺麗に拭いてくれて顔の傷跡は見えないように薄く化粧され、まるで眠っているかのような自分を見下ろす。

まだ理解が出来なかった。

だけど、両親が僕を見て崩れ落ちて泣く姿を見て、
ああ、僕は死んだんだ、と分かった。

それでもどこかでまだ認められない、
夢じゃないか、なんて何かに縋る思いもあったけれど、
そんなひと欠片の思いは砕け散った。

友花を見て。

僕を見た友花は震える手で僕の頬にさわった。
次の瞬間、
友花の顔から血の気が引いていくのが分かった。

真っ青な顔で崩れ落ちた。
大きな目から次々と涙が流れては落ちていく。

声を上げず、ただ涙を流し絶望したような顔の友花を見て、
もう痛みなんて感じないはずの身体なのに、
胸が酷く痛んだ。

両親を泣かせた。
両親より先に逝くという、最低な事をした。
最大の親不孝だ。

そして、
友花を泣かせた。

ずっと一緒にいると約束した。
ひとりにしないと、約束した。

なのに、僕は友花から離れた。
もう一緒にいられない。



それからの友花はまるで抜け殻のようだった。
いつも笑顔で明るくて無邪気で、少し恥ずかしがり屋で甘えたで、
運動が得意でいつも飛び跳ねるようにはしゃいでいた友花から、
笑顔が消えた。

ただ決められたルーティンをこなすだけの毎日を無表情で送っていた。

友達も先生も心配してくれているけれど、
友花はそれに応える気力も失くしていた。

毎日、泣いていた。
僕を名前を呼んで、泣いていた。

僕が毎日、友花を泣かせた。



……ダメだよ、友花。
このままじゃダメだよ。

友花にはたくさん、友花を大切に思ってくれてる人がいる。
みんな、心配しているよ。

おじさんもおばさんも、紬さんも毎日友花を思って心配している。
友達も、クラスメイトも先生も心配している。
僕の両親も。

友花はこれから生きていくんだよ。
僕がいなくても、ちゃんと生きていかなきゃいけない。
そして、
幸せにならなきゃいけないんだよ。

友花は大丈夫だよ。
友花は本当は強いから。
友花は本当は、
ひとりでちゃんと立ち上がれるんだよ。


……ほんの少しの時間だけど、
僕に出来る事をするよ。

だから友花……


「ただいまー!」

玄関から友花の声が響いた。

その声が明るい事に、
僕は安心して、そして嬉しくて。

急いで玄関に向かう。


「おかえり、友花」




後何日、
君と過ごせるだろうか――。