あの夏、君と最初で最後の恋をした

毎日夢を見る。

夢の中の私は幼稚園くらい。
今よりずっと幼い私はひとりで泣いている。

そんな私に手を差し伸べるのはひとりの男の子。

『大丈夫だよ、僕がいるから』

そう言って私の手を引いて一緒に歩き出す。

その男の子の手はとても暖かくて、私はいつの間にか泣き止んで笑っている。

『ねえ、颯ちゃん』

『なに、友花ちゃん』

『ずっとずっと、友花と一緒にいてくれる?』

そう聞く私に、男の子は笑って答えてくれる。

『うん、僕はずっと友花ちゃんと一緒にいるよ』

男の子の言葉に私は安心して男の子の手を握り返す。

だけど、暖かい男の子のその手は急に冷たくなり、
私は思わず手を離してしまう。

その瞬間、
成長して大きくなった男の子は私の前から消えてしまう。

『颯太……?
颯太……、颯太!!』

必死で叫ぶ私はひとり暗闇に飲み込まれ、
そこでいつも目が覚める。


「……うそつき」

ポツリと口からこぼれた言葉は、
颯太に届く事もなく、
朝の空気に溶けていった。