成瀬くん、嫌いです

 「ええと、成瀬くん?
 これ、まだ提出してないんだけど⋯⋯」

 「あー、ごめん、今から出してくる」

 「お願いしますっ」


 先生に押し付けられた仕事を終わらせて、帰りの用意を持って部活に向かう。
 ⋯⋯なんであの先生は私に押し付けるのだろうか。全くだ。

 ⋯⋯私は優等生、だから仕方ないかもだけどさあ。


 「日佳ー!」

 「どうしたの?」

 「これ、部活で無理だからさっ、お願い⋯⋯!」


 いや、私も部活あるんだけど。⋯⋯なんて言えないから、


 「⋯⋯うん、分かった。届けとくね」


 そう、返す。
 というか、それしか返せない。
 みんなの“清瀬日佳(きよせにちか)”は。


 「ごめん、ありがとー!!」


 うん、まだこの子は謝罪と感謝の言葉を伝えてくれる。
 大丈夫、今は。


 隣のクラスの人にお願いされたプリントを渡して、プリントを見てなんとか理解した内容を説明する。
 案外早く理解してくれたから、すぐ解放された。

 はあ、早く部活に向かわなきゃな。


 「遅れました、すみません」

 「清瀬さん、また遅れたの?
 連絡しといてって言ったよね?」

 「⋯⋯すみません」