求婚は突然に… 孤独なピアニストの執着愛

（心奈side）

次の日はどんよりした曇り空で、私はとりあえずの荷物をトランクに詰めて荷造りをする。

やっぱり、この怪我が治るまで実家に帰ろうと決心したのは朝方で、そこから無心で荷物を詰め始める。

この部屋に来て気付けば2カ月近く経っていた。来た頃よりも衣類が増えて、持って来た段ボールには収まりきれなくなっていた。

１カ月後には帰って来るつもりだけど、ついでに衣替えも兼ねて冬物を段ボールに詰める。

そういえば、泥棒が入ったアパートの方も、片付けて構わないと警察から連絡があった。取られた物は既に質屋に出され、売れてしまったそうだから、その物は帰って来ないという。

ただ、それ相当の賠償金は発生するから、裁判時に請求出来るらしい。梶原先輩は1週間シラをを切り通したが、ついにここ2、3日自白を始め、泥棒に入った事を認めた。

ただ、私のアパートや働き先をどうやって知ったか、その経路に謎が多くこれから掘り下げて、取調べて行くと言っていた。

アパートを引き払い、怪我が治ったらまた新たな物件を探そうと思う。

紫音さんはずっとここに居ればいいと言ってくれたけれど、このまま同棲を続けるのは彼に守られて、甘やかされて、依存してしまいそうで、本当の意味で病気を克服出来ないのではと思い直す。

自立出来てからこそ、胸を張って彼の隣りに立てれる気がする。それまで待っていて欲しいとはとても言えないけれど…。