2025年1月17日になっている。
 アキヒコは、40代後半になっている会社員の男性だ。そして、趣味と言えば、カラオケしかない。
 そして、アキヒコには、最近、彼女が、できた。
 彼女の名前は、マユと言う。
 マユは、30代半ばで、関西地方、神戸出身の女性だ。
 今日は、関西大震災から、もう30年は経っているようだ。
 しかし、アキヒコは、いつも、関西人のマユと話をしていて、最近、喧嘩ばかりしている。
 この間、マユは
「1月17日になったけど、関西では、地震で大変だったんだぁ、私は、神戸にいたときは、子供だったけど、結構、家が揺れて大変だったよ」と言った。
 慣れない避難所で、暮らして、そして、食事や睡眠・トイレなどにも、苦労をしたようだ。
 避難所では、女性に不快な事件を起こした男性が、いたとも言ったいた。
 2025年1月初め、九州で、南海トラフ地震が、あったのではないか、とか南海トラフ地震ではないとか、あった。
 しかし、マユは、大学では、地学専攻。防災研究所で、今も仕事をしているが、マユは、「防災グッズとかそんなのは、しないの?」と言っては、アキヒコは、「うっせ」しか言わなかった。
 アキヒコは、東京メトロ有楽町線で、家まで帰って、スマホをじっと見ていた。アキヒコは、いきものがかりのファンだ。そして、40代後半になっているアキヒコは、いつもいきものがかりの歌を歌う以外は、もう趣味なんてなくなった。地元の駅から自宅まで帰るとき、いつも、いきものがかりの歌を歌っている。
 今日も、定刻になって、職場から自宅へ帰ろうとして、有楽町線のホームに入った。
 都心から和光市まで帰ろうとして、ホームから、車内に入ろとした。最近、アキヒコは、疲れているのか、クラクラしていたが、誰かとぶつかって、アキヒコは、倒れた。
 そして、意識がなくなった。
 …
 明け方5時40分らしい。
 その時、アキヒコは、どこかの地下鉄に乗っているはずだったのが、何故か、見てみたら、「神戸三宮」となっていた。
 聞こえてくる関西弁。
 東京育ちのアキヒコは、慣れない言葉だ。
 夢だろうか?
 いや、どこかのドラマの設定だろうか?
 スマホを探したが、ない。
ーまもなく3号線に、特急大阪梅田行きが参ります。危険ですから、前の方は、白線の内側までお下がりください
 とあった。
 いや、オレがいたのは、東京メトロ有楽町線で、大阪ではないんだ!
 と思った。
 いや、マユは、神戸出身で、オレは、間違っても、こんなところには、来ないがなぁ
 と思った。
 それで、頬をつねったが、感覚はあった。
ーそうだ、今から、動いてみよう
 と思った。
 ブラウン色の阪急線が、車内に入ってきた。
 まだ、夜明けらしい。
 そうだ、マユが、普段のオレが、素っ気ない態度を取っているから、こんな動画を流しているのか。
 そう思った。
ー特急大阪梅田行き 只今、発車します
 とアナウンスが、流れた。
 今の2025年ならば、肉声で、車内でアナウンスをするのが、減った。
 そして、広告の釣り側には
ーオリックスブルーウェーブ
 がんばれイチロー選手
 なんてあった。
 いや、イチロー選手は、アメリカのマリナーズへ行ったけど、今の時代は、大谷翔平選手だろう
 と突っ込んだ。
 おかしい
 おかしい
ー次は、岡本 岡本でございます
 ええ、
 と思った。
 みんなは、スマホではなく、『ヤングマガジン』やら『ヤングジャンプ』だった。
 そして
ー1995年1月17日
 の文字が見えてきた、スポーツ新聞から。
 そして、目の前の女性がいた。
「もしもし、すみません」
 と言った。
 ナンパとかそれどころではない。
「ここは、どこですか?」
 と言った。
 彼女は、怪訝そうに
「神戸ですけど、どうされました?」
 と言った。
 見たら、顔が、マユと同じだった。
 その時、電車が、急に揺れて、
ーキャー 
だの
ーギィー
 だの
 ガシャンと音がした。
「マユ、ごめん、オレ、防災をしなかったオレが悪かった」
 …
 「大丈夫ですか?」
 と言った。
 そして
「ここは、どこですか?」
「角川総合病院ですよ」
「どうして、僕は、ここにいるんですか?」
「有楽町線で、倒れて、みんなが、救急車を呼んでくれたんです」
「ええ」
「仕事でお疲れのようだね」
 と看護師の中年の女性は、言った。
「あなたの彼女さんも、いるよ」
「彼女が、どうしたら良いかわかんなくて、それで、みんなも、呼んでね、救急車」
「今日、一日、ゆっくり点滴をしたから、ゆっくりしてから、家に帰りなさい」
 と言った。
 マユは、心配そうにアキヒコを観ていた。
 「今さ」
「夢でうなされて」
「うん」
「今度、一緒に、防災グッズを揃えるの手伝ってくれないか?」
 とアキヒコは、マユに言った。