女王になる前まではあんなに優しかったディディエが豹変した。
ジャシンスはこんなに我慢しているではないか。
これ以上、何を我慢すればいいというのか。
だが結婚式と盛大なパーティーを開くまでは耐えなければならない。
何より母にもそう言われていた。
(結婚式があるからお前を生かしているだけ……! 結婚式が終わったらあの口うるさいジジイと一緒に殺してやるんだから)
結婚式は相手がいなければできない。
戴冠式も流れ作業で終わってしまい盛大なパーティーが開けなかった。
ジャシンスが女王だと見せびらかさなければ気が済まない。
(そうすればわたくしを馬鹿にしていた人たちを見返せる!)
ジャシンスに付きまとうひどい噂の数々。
『赤い魔女』『わがまま王女』
自分より地位の低い令嬢たちにも、いつも馬鹿にされているような気がしていた。
役立たず王女と言われているメイジーよりはマシだが、先に女王に指名されたのはメイジーだと貴族たちは知っている。
だからこそそれを上塗りしなければいけないのだ。
(わたくしが女王なの。この国で一番偉いのはわたくし……! すべてわたくしのものなんだから)
処刑なんて天地がひっくり返ってもありえるはずがない。
ジャシンスは爪を噛みながら扉を睨みつけていた。
(ジャシンスside end)



