その後、ディディエはわざとらしく大きなため息を吐いて頭を押さえながら去っていってしまった。
(何よっ……! わたくしが間違っているとでも言うの!?)
ジャシンスは震えながら頭を下げる侍女にグラスを投げつけた。
「きゃ……!」
「うるさい……次に声を上げたら殺すから」
「……ひっ、ぁ」
侍女は壁を伝ってそのまま座り込んでしまった。
自分より可愛らしい侍女を見ているとメイジーを思い出してイライラする。
「──さっさとグラスを片付けなさいよっ!」
「は、はい!」
侍女たちがジャシンスに怯えながら片付けていく。
怯えた態度が気に入らない。
思い通りにならない態度が気に入らない。
ジャシンスを崇めて一番でいさせてくれない相手に生きている価値はないのだ。
(あーあ、何か面白いことはないかしら)
ジャシンスは髪を指で遊びながら考えていた。
そしてあることを思いつく。
宰相に宝石商を呼ぶように頼むと「何故ですか?」と返事が返ってきたではないか。
気に入らずにジャシンスは怒りを抑えながら彼の言葉を無視して自分の要望を伝えていく。



