「メイジー様、すぐに手当ていたしましょう」
「…………」
「……メイジー様」
何の反応も示さないメイジーを見て、リディは目に涙を浮かべている。
そしてメイジーの小さな体を抱きしめた。
(ただ……商人が届けてくれた新しい本を取りに行きたかっただけなのに……)
王妃とジャシンスはメイジーをわざわざ待ち構えていたような気がした。
まるでここにくることがわかっていたように。
だけどメイジーがそんなことを考えても仕方ない。
リディに手を借りてメイジーは起き上がる。
新しい本は後でリディに取りに行ってもらうことにした。
城の西側、物置きのような部屋にはたくさんの本が積み上がっていた。
そこが王女であるはずのメイジーの部屋。
そしてここだけが唯一安全な場所。
メイジーが存在しても邪険にされないところだ。
(……もうここで暮らして何年になるのかしら)
メイジーは母親との記憶がまったくない。
生まれてすぐに彼女は亡くなってしまったからだ。
肖像画もなく、メイジーに残されたのは真っ白な珠が嵌め込まれた指輪だけ。
いつも身につけていてはジャシンスに取られてしまうため、部屋に隠すようにして置いていた。
この国では珍しいホワイトゴールドの美しい髪もヘーゼルの瞳も、昔は大好きだったが今は見る影もない。
わざとボサボサにして、地味な服を着る。
そうしなければ二人に嬲られてしまうから。



