「…………その」

『なんだ?』


ガブリエーレと目が合っていたメイジー。


「ここにあるもの少し分けてもらってもいいですか?」

『……あ?』


両隣にある山のように積み上げられた食料。
今にもよだれが口端から滴ってしまいそうだった。
それに空腹で限界だった。
メイジーはギリギリの理性で食べ物に齧り付きたいのを耐えていたのだ。

(もう我慢できない……!)

血走ったメイジーの目で食べ物を見つめるメイジー。
鼻息荒い様子を見て限界を察したのだろう。
ガブリエーレは再びため息を吐いた。


『……好きにしろ』

「ありがとう! いただきますっ」


メイジーはすぐに横にあった丸く固めた塊を手に取る。
そして口元に運んで塊を食べた。
ほんのりと磯の香り。ざらりとした食感に薄い魚の味が口内に広がった。
それを一口、また一口と食べていくうちに自然と涙が流れていく。


「……おいひぃ」

『…………』


鼻水をすすりながらメイジーは塊を噛んで飲み込んだ。
今まで当たり前のようにご飯を食べていた。
けれどこうして極限の空腹まで追い込まれて初めて『当たり前のこと』のありがたみを思い知る。