ベルーガがメイジーをよく思っていないことは知っていた。
だからこそ今日は彼女につくように言ったのだ。
近くにいる者たちはガブリエーレに肩入れしすぎている。

神のように慕い、絶対だと思っていた。
だからこそメイジーも同じようにしなければならないと決めつけている。
彼女はガブリエーレに微塵も興味を持っていないし、帝国にいたいとは思っていない。

恐らくベルーガに『このまま島にいればいい』と言われたのだろう。
メイジーはそれをあっさり了承。
誰だって不便な暮らしよりも贅沢で華美な暮らしを好むのは当然だと思うだろう。

しかしメイジーは逆なのだ。
だからこそガブリエーレはメイジーが自分に夢中になった瞬間を見てみたいと思ってしまう。

今、生まれて初めて手に入らないものが目の前にある。
そのことが何よりも楽しくて仕方がないのだ。
こんな感情は今まで知らなかった。


『ベルーガ、ひどい顔だな』


メイジーには振り回されて、彼のきっちりとした衣服が乱れている。
それにベルーガの腫れた肌を見ていると何があったのか想像できる。


「……この通りですよ。魔法で貝を焼いてしまったらメイジー様の欲しいものがなくなってしまったんです。魔法を使わないということが、どういうことなのか久しぶりに思い知りました」