「いいんですか!? なら、お言葉に甘えてそうさせていただきます。わたしは島で暮らしますから説得してくださいね!」

「だから言ったので…………えっ?」


ベルーガが言い直す前にメイジーは彼に背を向けて砂浜を凄まじい速さで駆け出していく。


「メ、メイジー様っ!?」

「皇帝陛下にベルーガさんから伝えといてください! さよなら~っ」


メイジーはその場にベルーガを置いて森の中に消えていく。

(よし、大成功……!)

帝国での窮屈なお姫様暮らしはもうたくさんだ。

(わたしはここで完璧な真珠を作る……!)

何故か目的は大きく変わっているが、明日から制限なしに色々できると思うと開放感でいっぱいだ。
島民たちとまた過ごせると島の子どもたちと大はしゃぎをしていると、荒く息を吐いたベルーガが追いかけてくる。


「メイジー様、帝国に帰りましょう!」

「絶対に嫌です。わたしがここにいた方がいいと言ったのはベルーガさんですから」


ベルーガはメイジーがガブリエーレに言って帝国に無理やり居座っていると思っていたのだろうか。
明らかに焦っているようだ。


「先ほどのことは訂正いたします。ですから一緒に……!」

「訂正は必要ありません。わたしはここにいるので帝国へ帰ってもらって大丈夫ですから!」

「いえ、そうではなく……!」


そんな押し問答を繰り返しているうちに、すっかり日が暮れてしまった。
ついに強硬手段に出ようとしているベルーガを見て、メイジーが太い幹に足を絡めてしがみついて抵抗していた。