メイジーが反論する隙を伺いながら目を細めて彼の話を聞いていると、こちらの考えを察しているのだろう。
『条件は必ず守れ。いいな?』
「…………。はい」
今日は島民たちと挨拶だけらしく、ガブリエーレも同行するらしい。
美しいドレスを汚すわけにもいかずに自由に動けない悔しさを噛み締める。
マオたちが一瞬で持ってきてくれた網を受け取ったメイジーは木の扉に手を伸ばした。
そして軋む扉を開くと、ぼやけた景色が見えた。
見覚えのある岩場、どこまでも続く水平線。
(本当にあの島と繋がっているの……?)
メイジーが手を伸ばそうとすると、後ろからベルーガとガブリエーレが話す声が聞こえた。
「皇帝陛下、本当によろしいのですか?」
『ああ、これでハッキリするだろう』
「ですが、もしメイジー様に何もなければ……」
『そうなったらそうなったで考えるさ。だが、今はこの方法が手っ取り早い』
何のことを言っていたかは理解できないが、メイジーはとにかく早く行きたいと思っていた。
鏡のような境目を指で突いてみる。
すると、指が飲み込まれていくような不思議な感覚に目を見張る。
こちら側はひんやりとして冷たいのに、あちら側は温かいのだ。
確認するようにガブリエーレを見ると彼は頷いた。
未知の感覚にメイジーはガブリエーレの手を握る。
そしてメイジーは扉の先に飛び込んだのだった。



