「まったく……」
「このまま何もしないで朽ちていくのね」
「不吉なことを言わないでくださいませ。私たちが皇帝陛下にお叱りを受けるのですよ?」
「……わかっているわ」
メイジーも馬鹿ではない。
自分が勝手なことをしようとすれば、他の人たちがガブリエーレから叱られてしまう。
(すぐに殺す殺すって……島にいる時はそんなこと言わなかったのに。わたし以外には……)
ずっと岩場の上で空や海を眺めながら、一人で何かを考えていたガブリエーレの姿を思い出す。
「エレナたちから見て、皇帝はどんな人なの?」
ふと疑問に思ったメイジーは好奇心から問いかける。
するとエレナはわずかに目を見開いた。
侍女たちの間に緊張が走ったのがメイジーにもわかった。
侍女たちの顔は強張っている中、エレナはいつもの表情に戻る。
そして微かに震える唇を動かす。
「……簡単に触れてはいけない。神のようなお方です」
「神……?」
メイジーはどこに行っても神様のように扱われるガブリエーレの顔を思い出す。
メイジーから見ると、ただの性格が捻くれている青年である。
何か大切なものが抜けているような気もするが、まだまだ知らない一面があるのだろうか。
帝国の人たちと随分印象が違うようだが、この怯え方を見ると彼が恐れられていることがわかる。



