小説家と毒の果実

衛兵が巨大な杖をオリバーに向ける。オリバーもローブのポケットの中に入れられた杖を握り締め、いつでも魔法が放てるように警戒する。

張り詰めた空気の中、オリバーと衛兵は睨み合っていた。その空気を壊したのは、「どうしたんだ〜?」という眠たげな声だった。声のした方を見ると、あくびをしながらトレンチコートを羽織った男性が歩いてくる。ダークブラウンの髪は寝癖まみれだ。

「け、警部殿!」

衛兵の言葉にオリバーは思わず「は?」と言いそうになった。こんなだらしのない男が警部などふざけているとしか思えない。しかし、その男が出した警察手帳には「警部」とデカデカと書かれている。

「俺はセバスチャン・チェイサー。ここの捜査の責任者だ。お前、容疑者の知り合いか?」

「オリバー・テイルズです。ミアは幼なじみでーーー」

「あ〜、説明はいいわ。とりあえずこっち来い。現場見せてやる」

セバスチャンが手招きし、オリバーは駆け寄った。衛兵が「警部!そいつは一般人です!」と喚くと拘束魔法をかけ、スタスタと歩いて行く。